日本メドトロニック てんかんの定位的深部電極挿入術および脳腫瘍生検術に用いる脳神経外科手術用ロボティックシステム「ステルスAutoguide™」が保険適用

―ナビゲーションと連動する初の脳神経外科手術支援ロボット―

日本メドトロニック株式会社(本社:東京都港区)は、てんかんの定位的深部電極挿入術および脳腫瘍生検術に用いるロボティックシステム「脳神経外科手術用ナビゲーションユニット ステルスAutoguide(オートガイド)」(以下、ステルスAutoguide)の製造販売承認を2020年9月17日に取得し、2021年2月1日より保険適用されたことをお知らせします。脳神経外科領域への手術支援ロボットの導入により、より精度の高い手術手技を多くの患者さんに提供することを目指しています。

「ステルスAutoguide」(承認番号:30200BZX00298000) 手前左:ターゲティングユニット 手前右:コントロールユニット「ステルスAutoguide」(承認番号:30200BZX00298000) 手前左:ターゲティングユニット 手前右:コントロールユニット

てんかんの治療法には薬物療法と外科療法があり、薬物療法で発作が抑制されない難治性てんかんに対して、外科手術による治療が検討されます。てんかんの患者数は日本全体で約100万人と言われており、その2~3割の方が難治性てんかんと考えられています。外科治療の対象となるのは、発作の始まる部分(焦点)が特定できる部分てんかん(側頭葉てんかん等)で、かつその部分を切除しても障害が残らない場合に外科治療(焦点切除)が可能となります。

焦点切除を行うには、てんかんの発作がどこで始まっているのかを正確に同定する必要があります。焦点を同定するための検査として硬膜下電極留置が広く行われていますが、開頭を伴うため患者さんの身体的負担が大きいことに加えて、脳の深部領域の測定が困難でした。脳深部に挿入した電極からてんかん波をとらえる定位的深部電極挿入術(stereotactic electroencephalography[SEEG]insertion 以下、sEEG)という手法もありますが、正確な同定には10~24本の電極を挿入することが必要と考えられており、現状においては手術時間が10時間を超えることがあり、国内ではほとんど実施されていませんでした。

ステルスAutoguideは、術前に作成した手術計画に基づき、ステルスステーションナビゲーションシステムと連動することで、高い精度が求められる電極を挿入する位置と脳深部の測定位置の両方の位置合わせをロボット制御により自動で行います。ステルスAutoguideのような定位手術ロボットの登場で、多数の深部電極をより短時間かつ高い精度で挿入することができるようになり、大きな侵襲(開頭)を伴う硬膜下電極留置を代替することが期待されます。実際に、sEEGの普及が進む欧米、中国では定位手術ロボットの導入により、深部脳波測定の件数が硬膜下電極測定を上回る流れが見られています。

自治医科大学脳神経外科の川合謙介教授は「定位手術ロボットの支援によるsEEGは海外で急速に普及しており、日本への導入が待ち望まれていました。sEEGは、従来の開頭・硬膜下電極留置術に比較して、脳深部を含めた3次元的な焦点局在診断を可能とするだけでなく、患者さんへの負担が少ないために留置術翌日から脳波記録が開始できるという利点があります。もちろん、双方に利点欠点がありますので、症例毎の使い分けや場合によっては併用が必要ですが、患者さんにとって安全かつ負担が少ない選択肢が増えるのは素晴らしいことです。sEEGに定位手術ロボットを用いることで、多数の電極をより短時間で正確に留置できるようになることが期待できるため、定位手術ロボットの技術進展および普及はsEEGの意義を高め、その本質を具現化する上でなくてはならないものと言えます」と述べています。

また、ステルスAutoguideは、脳腫瘍の治療方針を決定するために、画像検査での診断をもとに、腫瘍組織そのものを生検針で採取し、脳腫瘍の種類や悪性度を詳しく診断する脳腫瘍生検術にも保険適用されました。画像検査で得られたデータをもとに、脳腫瘍の位置情報から作成した手術計画に基づいて自動で脳腫瘍生検のためのルートを決定するため、正確な組織片の採取に役立ちます。

メドトロニックは、ナビゲーションとロボット技術を融合するなどの手術手技全体を繋げる技術を通じて、多くの患者さんにより良い治療を提供すべく、取り組んでまいります。

てんかんとは
てんかん性発作を引き起こす持続性素因を特徴とする脳の障害です。具体的には、慢性の脳の病気で、大脳の神経細胞が過剰に興奮するために、脳の発作性症状が反復的に起こる状態を指します。発作は突然起こり、普通とは異なる身体症状や意識、運動および感覚の変化などが生じます。他の疾患でも同様の症状が起きることはありますが、明らかなけいれんがあればてんかんの可能性は高いと考えられます。

【メドトロニックについて】
Medtronic plc(www.medtronic.com )は、アイルランドのダブリンに本社があり、世界中の人々の痛みをやわらげ、健康を回復し、生命を延ばすことを目指した医療技術、サービス、ソリューションを提供するグローバルリーダーです。全世界で9万人を超える従業員を擁し、約150ヵ国の医師の方々や病院、そして患者さんに貢献しています。世界中のパートナーの皆様と力を合わせて、さらなる医療の発展に取り組んでいます。

【日本メドトロニック株式会社 (Medtronic Japan Co., Ltd.)について】
日本メドトロニックは1975年の設立以来40年以上にわたり、生体工学技術を応用し、様々な疾患をお持ちの方々の痛みをやわらげ、健康を回復し、生命を延ばす医療機器を通して人類の福祉に貢献することを目指しています。メドトロニックが提供する先端医療技術は、心臓疾患をはじめ、パーキンソン病、糖尿病、脊椎疾患、脳疾患、慢性的な痛みなどを広くカバーしています。
Webサイト www.medtronic.co.jp

なお、将来の業績見通しに関わるすべての記述は、メドトロニックが米国証券取引委員会に提出する定期報告書に記載されているようなリスクや不確定要素の影響を受ける場合があります。実際の業績は予想と異なる可能性があります。