19万人が泣き笑いした異例のヒット映画『ぼけますから、よろしくお願いします。』93歳にして妻の老老介護をはじめた夫、今年めでたく100歳に!

株式会社新潮社

(C)2018「ぼけますから、よろしくお願いします。」製作・配給委員会

(C)2018「ぼけますから、よろしくお願いします。」製作・配給委員会

2014年に85歳で認知症と診断された母、93歳で妻を介護しはじめた父。その姿を、二人が暮らす広島県呉を離れて映像ディレクターとして働く娘・信友直子さんが撮影、監督も務めた映画『ぼけますから、よろしく願いします。』。2018年11月に公開以来、映画館で約10万人、自主上映会で約9万人を動員し、ドキュメンタリー映画としては異例のヒットとなっている。

元々、信友さんが仕事用ハンディカメラの撮影練習のため、帰省の折に両親を撮り始めたのが2000年頃。つまり、約20年前からの父母の様子が残っており、認知症発症前の元気な母・文子さんが、年を追うごとに変化していく状況が記録として残ることになった。現在は腰が曲がり、外出には手押し車が手放せない父・良則さんのハツラツとした姿も映像に映し出されている。

「私、頭がおかしゅうなっとるようなんよ。ばかになったんじゃわ」

「もう死ぬる! 包丁持ってきて!」

――かつては料理・裁縫が得意な万能主婦、趣味の書道では全国大会で表彰されるなど家族にとって自慢の妻・母であった文子さんが、少しずつ、でも確実に、ある意味「壊れていく」ことへの言い知れぬ悲しみが画面に溢れる。それでいて元来ユーモアのある文子さんは、年始には家族に向けて「今年はぼけますから、お願いします」と挨拶するなど、おとぼけぶりを見せて、撮影する娘の信友さんだけでなく観客も笑わせた。

母の変貌を見かねて実家に戻ったほうがいいかと尋ねる直子さんに、父の良則さんは言う。

「わしが元気なうちは、おっ母はわしがみるけん、あんたはあんたの仕事をしんさい」

「まあこれも運命よ。定めじゃわい。おっ母には今まで、家のことをようしてもろうたんじゃけん。おっ母がおかしくなったんなら、今度はわしがかわりにしてやらんと、しょうがないじゃろう」

(C)2018「ぼけますから、よろしくお願いします。」製作・配給委員会

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認知症家族、老老介護の生活を撮る信友さんは、父と母の絆がこれまで以上に深まっていく様を感じ取り、子供に戻っていくような母への愛慕、全力で家族を守ろうとする父への尊敬を改めて噛みしめる。作品には、抑揚を抑えた信友さんの一人語りが添えられた。

実は文子さんが脳梗塞とその後遺症の末、今年6月14日に他界。コロナ禍で見舞いもままならなかったが、面会が許可になった6月初頭から毎日、病院に通った良則さんと信友さんは、寝たきりの文子さんに思う存分話しかけ、危篤状態になっても思い残すことなくお別れができたという。

そして、さる11月1日、老老介護を続けてきた良則さんがめでたく100歳を迎えた。ファミレスの大好きなハンバーグ定食を完食するほどお元気だ。誕生日当日は、呉からつないだ「オンライン生誕祭(with信友直子監督)」が開催され、多くの人が良則さんの100歳を祝い、その様子は朝日新聞紙面(12月7日付)ほか、朝日DIGITAL(https://www.asahi.com/articles/ASND34DRJNCSPITB00K.html)でも配信された。
 

『ぼけますから、よろしくお願いします。』新潮社刊

『ぼけますから、よろしくお願いします。』新潮社刊

映画でナレーションを控えめにしたのは、観た人が思いを馳せられる「間」を大切にしたいと信友さんが考えたからだ。変わってしまった母の言動や日々の買い物に難儀をする父の姿を臆せず公開した「監督」の立場の裏で、信友さんが一人娘として感じた胸の内を吐露したのが著書『ぼけますから、よろしくお願いします。』だ。「映画の場面場面での信友さんの気持ちがわかり納得する」など読者からの声が多く寄せられ、発売から1年たった今も増刷を重ね、累計9刷のロングセラーとなっている。
 

<各方面から寄られたコメント>

「ぼけてなお、母はずっと母。その母を一人で支える父は、弱ってなお、夫なのである」――阿川佐和子

「老いとともに変化する大切なひと。その変化にいちばん辛さを感じているのは家族ではなく、老いていく本人なのだ」――ヤマザキマリ

「特筆すべきはユーモアとあたたかさ、それでいてきれいごとに終わらないリアリティ」――梯 久美子

「なんとあたたかく魅力的な家族か。生きて老いて支え合うことの幸福と哀切さが伝わってくる」――櫻井よしこ

「『介護は親が命懸けでしてくれる最後の子育て』という感動的名言が光る」――藤原正彦

 

信友直子著『ぼけますから、よろしくお願いします。』

陽気でしっかり者の母親が徐々に「出来なくなっていく」一方、家事はいっさい妻任せで90を超えた父親が「やらなければならなくなる」現実。両親の様子を時に涙ぐみ、夫婦・家族の絆を噛みしめつつ、父の気丈な言葉に背中を押されても、離れて暮らすことへの娘としての良心の呵責──。
認知症はどう進むのか、家族に認知症患者がいるとはどういうことか、老老介護の現実とは。それらを冷静に記録していこうとする取材者として、また娘としての2つの立場で踏ん張り、あるいはその間で揺れながらカメラを回し続けた著者が、映画に盛り込めなかった
克明な親の「老い」の記録、そして見守り続けた子としての心境を綴る。

■<著者プロフィール>
信友直子(のぶとも なおこ)

1961年広島県呉市生まれ。東京大学文学部卒。森永製菓入社後、「グリコ森永事件」当時に広告部社員として取材を受けたことがきっかけで、映像制作に興味を持ち転職。1986年「テレパック」、1995年「フォーティーズ」を経て2010年フリーディレクターとして独立。主にフジテレビでドキュメンタリー番組を手がける。2005年子宮筋腫により子宮摘出手術、2006年インド旅行中に列車事故で重傷、2007年乳がんを発症など波乱の人生。乳がんの経験はセルフドキュメント「おっぱいと東京タワー」(フジテレビ、ザ・ノンフィクション)として放映。初の監督兼撮影担当である『ぼけますから、よろしくお願いします。』は、文化庁映画賞文化記録映画大賞など各種賞を受賞。

【書籍データ】『ぼけますから、よろしくお願いします。』(新潮社刊)
【発売日】2019年10月25日
【造本】四六版ソフトカバー
【定価】1364円(税別)
【書籍ページ】https://www.shinchosha.co.jp/book/352941/

【出典】PR TIMES
【参考URL】https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000107.000047877.html